妊娠初期検査項目
妊娠初期検査で確認する8つの項目
妊娠9週前後の健診で、採血の項目をいくつも読み上げられて、思わず身構えてしまう方は少なくありません。
血液型から甲状腺の働きまで、1回の採血でまとめて確認しているのは、これから先の健診の進め方や、いざというときの備えを早いうちに把握しておくためです。
項目は次の8つです。それぞれ何をみているのか、この後の見出しで順番にご案内します。
| 検査項目 | わかること・目的 |
|---|---|
| 血液型(ABO型・Rh型)・不規則抗体検査 | 輸血への備え、母子間の血液型不適合(新生児溶血性疾患)の有無 |
| 血算・貧血・血小板検査 | 貧血の程度、出血傾向、血小板減少の有無 |
| 感染症スクリーニング(梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV等) | 母子感染リスクの有無 |
| 抗体検査(風疹・トキソプラズマ・HTLV-1) | 胎児への影響が知られる感染症への既往・抗体保有状況 |
| 妊娠糖尿病スクリーニング | 血糖値が上がりやすい時期特有のリスクの有無 |
| 凝固因子検査 | 血栓症・出血傾向のリスク |
| 肝機能検査 | 肝臓への負担、HELLP症候群等の兆候 |
| 甲状腺機能検査 | 甲状腺ホルモンの異常(胎児発育・流産早産リスクに関与) |
血液型・不規則抗体検査でわかること
血液型はもう分かっているのに、なぜ妊娠中にまた調べるの、と思われるかもしれません。
確認しているのは血液型(ABO型・Rh型)だけでなく「不規則抗体」という別の抗体の有無で、分娩時に輸血が必要になった場合の備えと、お母さんと赤ちゃんの血液型が合わないために起こる病気(新生児溶血性疾患)がないかを早めに把握するためです。
とくに注意しているのが、お母さんがRh(-)型の場合です。お父さんがRh(+)型で、赤ちゃんがRh(+)型を受け継ぐと、お母さんの体がRh因子に対する抗体を作ってしまうことがあります(Rh感作)。これが次回以降の妊娠に影響することがあるため、感作を防ぐために次のような対応をとります。
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妊娠28週前後
抗D人免疫グロブリンの投与を行い、母体の抗体産生(感作)を防ぎます。
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分娩後72時間以内
赤ちゃんの血液型を確認し、Rh(+)型であれば再度、抗D人免疫グロブリンを投与します。
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次回以降のご妊娠
同様の検査と対応を継続し、感作が起きていないかを確認しながら妊娠経過をみていきます。
今回の検査結果は、次に妊娠されたときにも関わってくる情報です。
母子健康手帳などに記録が残りますので、大切に保管してください。
血算・貧血・血小板検査でわかること
妊娠中は体をめぐる血液の量そのものが増えるため、赤血球の濃度が相対的に薄まり、貧血の数値が出やすくなります。
病気というより、妊娠にともなう自然な体の変化です。
ヘモグロビンの値から貧血の程度を確認し、基準を下回っていれば鉄剤を飲みながら経過をみていきます。
あわせて血小板の数も調べ、出血しやすい状態や妊娠高血圧症候群にともなう血小板の減少がないかを確認します。
分娩時の出血量は人によって差があるため、あらかじめ血液の状態を知っておくことが、当日の対応をスムーズにします。
感染症スクリーニング(梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV等)
梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIVは、いずれもお母さんから赤ちゃんへうつってしまう可能性がある感染症です(母子感染)。
妊娠初期の採血でまとめて確認しているのは、早く分かれば分かるほど、赤ちゃんを守るための対応がとりやすくなるからです。梅毒やB型肝炎は、たとえ陽性であっても、治療や生まれた赤ちゃんへの予防的な処置によって母子感染を防げる可能性が高い感染症です。
C型肝炎やHIVについても、分娩方法を工夫したり、赤ちゃんに薬を使ったりする対応があります。結果が陽性だったときの詳しいお話は、結果が出た時点で医師から直接お伝えします。
感染経路についてもっと知りたい方は妊娠中の感染症のページにまとめました。
風疹・トキソプラズマ・HTLV-1抗体検査の目的
血液検査の結果に「風疹抗体陰性」などと書かれていると、何のことか分からず戸惑う方もいらっしゃいます。
風疹・トキソプラズマ・HTLV-1は、いずれも胎児や赤ちゃんへの影響が知られている感染症で、妊娠初期の抗体検査は、今の自分がどのくらい注意すべきかを知るために行っています。
風疹は先天性風疹症候群、トキソプラズマは初めて感染したときの赤ちゃんへの影響がそれぞれ知られていますが、この2つはすでに抗体を持っていれば再感染の心配はほとんどありません。
抗体価が低い方や抗体を持たない方には、人混みを避ける、お肉はしっかり加熱するといった生活の注意点をお伝えします。
HTLV-1は少し性質が違い、抗体があること自体がすでに感染している状態(キャリア)を意味し、出産後の母乳を通じてうつることが主な経路です。
抗体検査が陽性だった場合は、授乳の方法(完全人工栄養にするか、短期間だけ母乳を続けるかなど)を、産後にあらためて一緒に考えていきます。
感染経路や日常生活での注意点は妊娠中の感染症のページで詳しくご紹介しています。
妊娠糖尿病スクリーニング
妊娠中は胎盤から出るホルモンの働きで、血糖値が上がりやすくなります。
体質というより妊娠特有の変化ですが、そのままにしておくと赤ちゃんが大きく育ちすぎたり(巨大児)、妊娠高血圧症候群につながったりすることがあるため、早めのチェックが必要です。
初期のスクリーニングで数値に気になる点があれば、時期をあらためて75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)という詳しい検査を行います。空腹時・ブドウ糖摂取後1時間・2時間の血糖値を測定し、下の基準値をどれか1項目でも超えると妊娠糖尿病と診断されます。
| 測定タイミング | 診断基準値 |
|---|---|
| 空腹時 | 92mg/dL以上 |
| ブドウ糖摂取後1時間値 | 180mg/dL以上 |
| ブドウ糖摂取後2時間値 | 153mg/dL以上 |
診断がついた場合は、まず食事の内容を見直しながら血糖の状態を一緒に整えていきます。
凝固因子検査の目的
妊娠すると、血液は少しずつ固まりやすい状態に変わっていきます。
この傾向は後期に向けてさらに強まります。
凝固因子の検査で調べているのは、出血しやすい体質か、逆に血が固まりすぎて血栓ができやすい体質かということです。
妊娠初期の段階からこれを把握しておきます。
分娩では出血を伴う場面が必ずあるため、血液が固まる力をあらかじめ知っておくことが、当日の対応をスムーズにする備えになります。
肝機能検査でわかること
妊娠が進むと、肝臓にも少しずつ負担がかかっていきます。
まれにHELLP症候群のように、肝臓の働きが乱れる状態が起こることもあります。
妊娠初期の肝機能検査は、こうした変化が起こる前の、いわば「いつもの数値」を確認しておく意味も持っています。
肝炎ウイルスの検査とあわせて行うことで、お母さんの体の状態を一度に把握でき、妊娠中に数値が変わったときの比較材料にもなります。
甲状腺機能検査の必要性
甲状腺の数値まで妊娠検査で調べるのは意外に思われるかもしれません。
甲状腺ホルモンは、赤ちゃんの脳や体が育つうえで大切な役割を担っているため、妊娠初期にその働きに乱れがないかを確認しています。
甲状腺機能の異常は、ホルモンが多すぎても少なすぎても流産や早産に関わることがあり、自覚症状がほとんどないまま進んでいることも珍しくありません。
異常が見つかった場合は、内分泌内科などの専門の科と連携をとりながら、数値を確認しつつ妊娠経過をみていきます。
よくあるご質問
妊娠初期検査で調べる項目の多くは食事の影響を受けにくいものです。特別な食事制限はいらないことがほとんどですが、気になる場合は健診のときにご確認ください。
項目によって結果が出るまでの日数が違います。次回の妊婦健診の際にあわせてお伝えします。
検査項目や数値によって、その後の対応は変わります。追加の検査を行うこともあれば、専門の科と連携しながら経過をみていくこともあります。結果について気になることがあれば、次回の健診のときに医師へ直接お尋ねください。
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この記事の監修者
検査結果と感染症の関わりについてもっと知りたい方は、妊娠中の感染症のページもあわせてご覧ください。数値について気になることがあれば、次回の妊婦健診で医師にお尋ねいただけます。