更年期が始まる年齢

閉経とは、月経が来ない状態が12か月以上続いたときに、振り返って「あのときが最後の月経だった」と判断されるものです。日本人女性の閉経年齢は個人差が大きく、40代後半から50代半ばに分布しています。

この閉経の前後5年ずつ、合わせて約10年間が更年期です。40代前半から「なんとなく不調」を感じ始める方も少なくありません(いわゆるプレ更年期)。

更年期に現れる症状のうち、日常生活に支障が出るほど強いものを更年期障害と呼びます。症状があっても生活に困っていなければ、必ずしも治療の対象にはなりません。「治療するかどうか」は、つらさの程度で決めていきます。

40歳より前に月経が止まった場合

40歳未満で月経が来なくなった場合は「早発卵巣不全(早発閉経)」の可能性があります。
40歳未満の女性のおよそ1%にみられるとされています。放置するとエストロゲン不足の状態が長く続き、骨量の減少や脂質代謝の異常につながることがあるため、年齢が若いほど早めのご相談をおすすめします。

【補足】日本産婦人科医会「早発卵巣不全(POI)」、日本内分泌学会。40歳未満で続発性無月経が半年持続、FSH高値、エストロゲン低値により診断

更年期にみられる症状

更年期の症状は、大きく4つのグループに分けられます。

血管運動神経に関する症状

精神・神経に関する症状

運動器に関する症状

泌尿・生殖器に関する症状

最後の泌尿・生殖器の症状はGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)と呼ばれ、ほかの症状と違って自然に治まることが少なく、年齢とともに進む傾向があります。相談しづらい内容ですが、治療で改善が期待できる領域です。

更年期障害と間違えやすい病気

更年期の症状は「どこが悪いとも言えない不調」の形をとるため、別の病気が隠れていても更年期のせいだと考えてしまいがちです。次のような病気は、更年期障害と症状が重なります。

病気似ている症状
甲状腺機能亢進症・低下症動悸、発汗、疲労感、体重変化、気分の落ち込み
鉄欠乏性貧血疲れやすさ、動悸、めまい、頭痛
うつ病・適応障害不眠、意欲低下、気分の落ち込み
高血圧、脂質異常症頭痛、ほてり、動悸
関節リウマチ手指のこわばり、関節痛
子宮筋腫、子宮体がん月経量の増加、不正出血

このため当院では、問診とあわせて血液検査を行い、他の病気の可能性を確認したうえで治療方針を決めています。

特に検査を受けていただきたい出血

閉経後の出血や、月経とは無関係な出血があるときは、更年期の症状として様子を見ずに一度検査を受けてください。

診察の流れと検査

  1. 問診

    いつから、どんな症状が、どのくらいの強さで出ているかをうかがいます。月経の状況、これまでの病気、飲んでいるお薬、ご家族の病歴(乳がん・血栓症など)も確認します。症状の程度を把握するために、簡略更年期指数(SMI)などの質問票を使うことがあります。

  2. 内診・超音波検査

    子宮や卵巣の状態を確認します。子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜の厚さなどをみます。

  3. 血液検査

    女性ホルモン(エストラジオール)と、脳から卵巣へ指令を出すホルモン(FSH)を測り、卵巣の働きの低下を確認します。あわせて、甲状腺ホルモン、貧血、肝機能・腎機能、脂質、血糖なども調べます。

  4. 必要に応じた検査

    子宮がん検診、乳がん検診、骨密度測定、血圧測定などを組み合わせます。とくにHRTを始める場合は、開始前に乳がん・子宮がんの検査を受けていただきます。乳がん検診は視触診・超音波検査を基本とし、マンモグラフィや骨密度測定が必要な場合は院内実施または連携医療機関のご案内となります。

治療の選択肢

更年期障害の治療は、大きく次の選択肢があります。どれか一つに絞るのではなく、組み合わせて使うこともあります。

治療法向いている方特徴
ホルモン補充療法(HRT)ほてり・発汗・寝汗が中心の方、腟の乾燥がつらい方不足したエストロゲンを補う。血管運動神経症状への効果が高い。保険適用
漢方薬症状が幅広い方、HRTを受けられない方、まずは穏やかに始めたい方体質(証)に合わせて選ぶ。保険適用
向精神薬(SSRI・SNRIなど)気分の落ち込み・不安・不眠が前面に出ている方精神症状が強い場合の選択肢
サプリメント(エクオール等)治療までは望まない、軽い症状の方医薬品ではなく食品にあたります
生活習慣の見直しすべての方運動、睡眠、禁煙、飲酒量の調整、カルシウム・ビタミンDの摂取

ホルモン補充療法(HRT)とは

HRTは、閉経によって減ったエストロゲンを少量補う治療です。ほてり・のぼせ・発汗といった症状に対して、比較的早い段階で変化を感じる方が多い治療法です。

子宮のある方は、エストロゲンに黄体ホルモンを併用します。エストロゲンだけを使い続けると子宮内膜が厚くなり子宮体がんのリスクが上がるため、黄体ホルモンを組み合わせて内膜を守ります。子宮を摘出された方は、エストロゲン単独で行います。

薬の使い方(投与経路)

種類特徴
飲み薬(内服)服用が簡単。肝臓を通るため、血栓のリスクや中性脂肪への影響を考慮します
貼り薬(パッチ)週1〜2回貼り替え。肝臓を通らないため血栓リスクが低いとされます。かぶれることがあります
塗り薬(ゲル)毎日腕などに塗ります。量の微調整がしやすい
腟剤腟の乾燥・性交痛・頻尿など、局所の症状が中心のとき

飲み方には、毎日休みなく続ける方法と、周期的に休薬する方法があります。閉経からの年数や、月経のような出血を許容できるかによって選びます。

HRTを始めるタイミング

閉経後10年以内、かつ60歳未満で開始したほうが、心血管系への影響という点で有利とされています。閉経から長く経ってから始める場合は、リスクとメリットを個別に検討します。

副作用として起こりうること

HRTでは次のような症状が出ることがあります。多くは使い始めの数か月で落ち着きますが、続く場合は薬の種類や量を調整します。

すぐに服用・貼付を中止しご連絡いただきたい症状

頻度は低いものの注意が必要なものとして、静脈血栓塞栓症(脚のむくみや痛み、急な息苦しさ・胸の痛み)があります。こうした症状が出た場合は服用・貼付を中止し、すぐにご連絡ください。

乳がんとの関係

「HRTで乳がんになるのでは」というご心配をよくうかがいます。現在わかっていることを整理すると、次のとおりです。

そのうえで、HRTを行っている間は乳がん検診を定期的に受けていただきます。HRT自体がリスクを大きく上げるためではなく、すでにできていた小さな乳がんがホルモンの影響で見つけにくくなったり大きくなったりする可能性があるためです。診察のたびに、治療を続けるかどうかを一緒に見直していきます。

参考:ホルモン補充療法ガイドライン2025年度版(日本女性医学学会、2025年5月発行)/乳癌診療ガイドライン(日本乳癌学会)CQ2

HRTを受けられない方(禁忌)

次に当てはまる方には、HRTは行いません。

HRTを行わない方
  • 現在乳がんの治療中、または乳がんにかかったことがある方
  • 現在子宮内膜がんの治療中の方
  • 原因のわからない不正性器出血がある方
  • 血栓性静脈炎、静脈血栓塞栓症がある方、またはかかったことがある方
  • 心筋梗塞・狭心症、脳卒中にかかったことがある方
  • 重い肝機能障害がある方
  • 妊娠している、または妊娠している可能性がある方

また、子宮筋腫、子宮内膜症、糖尿病、高血圧、片頭痛、胆のう疾患などがある方は、慎重に検討したうえで行うかどうかを判断します。

該当する場合でも、漢方薬など他の方法をご提案できますので、まずはご相談ください。

HRT中の定期検査

治療を安全に続けるため、次の検査を定期的に受けていただきます。

漢方薬という選択

HRTを受けられない方、ホルモン剤に抵抗がある方、症状が多岐にわたる方には漢方薬をご提案しています。更年期の治療でよく使われるのは次の3つです。

処方向いている状態の目安
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)冷え、むくみ、疲れやすい、色白で体力が控えめな方
加味逍遙散(かみしょうようさん)イライラ、不安、症状が日によって変わる方
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)のぼせて足は冷える、肩こり、比較的体力のある方

漢方薬は体質に合わせて選ぶため、効果の現れ方には個人差があります。合わない場合は処方を変更しながら調整していきます。

費用の目安

更年期障害と診断された場合、HRT・漢方薬ともに健康保険が適用されます。

内容3割負担の目安
初診(診察・血液検査)受付でお尋ねください
再診・お薬(1か月分)受付でお尋ねください
骨密度測定受付でお尋ねください

※金額は検査の内容によって変わります。詳しくは受付でお尋ねください。

よくあるご質問

Q
まだ生理があるのですが、更年期の相談をしてもよいですか。
A

はい、ご相談ください。月経がある時期でも、周期が乱れ始めたころから症状が出ることはよくあります。この時期は、HRTではなく低用量ピル(LEP)で調整するほうが合っている場合もあります。

Q
HRTは何年くらい続けるものですか。
A

一律に「何年まで」と決まっているわけではありません。症状が落ち着けば終了できますし、骨量の維持を目的に続ける方もいます。定期検査を受けながら、続けるかどうかを1年ごとに見直していきます。

Q
婦人科と心療内科、どちらに行けばよいですか。
A

気分の落ち込みや不眠が中心でも、年齢的に更年期が疑われる場合は、まず婦人科で女性ホルモンや甲状腺の状態を調べる価値があります。検査の結果、精神科・心療内科での治療が適していると判断した場合は、ご紹介します。

Q
太りやすくなったのも更年期のせいですか。
A

閉経前後は基礎代謝が下がり、体脂肪がつきやすくなります。ただし甲状腺の病気でも体重は変化するため、検査で確認しておくと安心です。

Q
検査だけ受けることはできますか。
A

できます。「治療するかどうかはまだ決めていないが、今の状態を知りたい」というご希望でも問題ありません。

Q
予約は必要ですか。
A

予約がなくても受診できますが、血液検査を含むため、WEB予約をご利用いただくと当日の流れがスムーズです。

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この記事の監修者

院長 堀 量博

院長

堀 量博(ほり かずひろ)

堀産婦人科

  • 日本産婦人科学会認定医
  • 日本臨床細胞学会指導医
  • 母体保護法指定医
院長プロフィールを見る

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