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月経前症候群と漢方治療 花

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はじめに

今回は月経痛と月経前のトラブルに対する漢方薬のお話です。
漢方薬単独だけではなく、目的や病態により西洋薬や手術と上手に組み合わせて治療法を選択することが大切です。また子宮筋腫や子宮内膜症についてもお話します。

月経困難症と漢方治療

月経を有する女性の半数以上が月経時に下腹痛などの症状を経験し、そのうち約10%が痛みのために日常生活に支障をきたす重症例であり、月経困難症と呼ばれています。
症状としては下腹痛、腰痛、腹部膨満感、吐気、頭痛、疲労脱力感、下痢、イライラ、憂鬱などひとによりさまざまな症状がみられます。
子宮の形に異常のみられない機能性(原発性)と子宮筋腫などが原因の器質性に分類され、90%以上が機能性月経困難症です。


漢方医学で月経困難症の主な症状である月経痛は瘀血、すなわち血の変調、血の鬱滞といった血液循環障害が主体であり、頭痛、のぼせ、めまい、肩こり、月経不順なども瘀血の病態といえます。
また瘀血に加え、水毒や気滞などの病態も現れます。


漢方療法では証に従って治療することが大切で、特に月経困難症や月経前症候群など血の道の障害では随証治療が重要です。
専門的な証の診察はさておきからだに必要なものが不足している状態を「虚証」、不要なものがある状態を「実証」といいます。月経前から中にかけての疼痛は「実証」、月経後にかけての疼痛は「虚証」、手足が冷え顔面や皮膚が蒼白なものは「陰証」、赤ら顔は「陽証」であるといいます。
治療としては虚証のかたは不足を補う漢方薬を、実証のかたは不要なものを取り除く漢方薬を服用しなければいけません。虚証のかたが実証の漢方薬をのめば、補うべき処方が逆に取り除く処方をすることになり逆効果になります。


月経困難症によく用いられる、瘀血に対する漢方薬には当帰芍薬散(虚証)、桂枝茯苓丸(中間〜実証)、桃核承気湯(実証)などがあります。当帰芍薬散に含まれる当帰、川芎は温性理血剤の代表で、血液、殊に月経を調節するといわれ、冷え性、貧血、むくみがあり疲れやすいかたに効果があります。
桂枝茯苓丸に含まれる牡丹皮、桃仁には強力な駆瘀血作用があり、骨盤内の鬱血状態を改善し桂皮を加えることにより鎮静、鎮痛作用が強化されます。
芍薬には鎮痛、鎮痙作用があり月経痛に効果があります。
芍薬甘草湯はさきの芍薬とこれも鎮静、鎮痙、抗炎症作用のある甘草の効果により子宮を収縮させるプロスタグランデジンの産生を抑え、痛みを伝える神経を遮断し月経痛を緩和させます。

月経困難症と漢方治療

月経前症候群(PMS: Premenstrual Syndrome)は月経前の黄体期の間に続く身体的症状で月経の開始とともに消えるものをいいます。
月経困難症と同様な症状に加えて、精神症状と乳房痛などの乳房症状が多くみられるのが特徴です。 原因はホルモンの過不足による体内水分貯留の増加やナトリウムなどの電解質の異常、神経伝達物質の関与、ビタミンB6不足などの説がありますが一定の見解はありません。

漢方医学では月経中や月経前後の不快症状は“月信痛”などとして月経困難症とPMSを区別しないで治療がなされてきました。
PMSでは浮腫、体重増加、一時的肥満などを訴える例が多く、漢方的には余分な水分が体内に不均衡に貯留する状態と考え、水毒と診断し五苓散、柴苓湯、苓桂朮甘湯などの利水剤も用いられます。


駆瘀血剤の使い方では、冷え性やイライラなど精神神経症状がないか、あっても気にならないかたには桂枝茯苓丸、精神神経症状が主体のときは加味逍遥散、冷え性がつらい場合は当帰芍薬散が適しています。
水毒に関してはめまい、頭痛、吐き気をともなうときには苓桂朮甘湯を、胸脇苦満や下痢、アレルギー様症状があるときには柴苓湯を選択します。
冷え性がとくにひどい場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯を、月経前の頭痛には釣藤散を月経中に頭痛がピークになる場合は呉茱萸湯を試してみるといいでしょう。

漢方療服用の仕方

漢方薬を使用する場合、連日服用が基本ですが、月経前症候群や月経困難症は周期的に短期間症状が現れるので、症状の現れる数日前から服用を開始して症状が消えたら中止する周期的投与を試みてもいいでしょう。
漢方薬は即効性に乏しいものが多く、月経困難症の症状は月経期以外は症状がないため少なくとも2、3ヶ月(2、3周期)は続けてください。
ただ効果が認められなければ“漢方はすぐには効かないから”と漫然と服用を続けることは意味がありません。
芍薬甘草湯は漢方薬にしてはめずらしく即効性(なんと5分で効くこともあります!)があるため、頓服投与も可能ですが持続時間が短いので鎮痛剤との併用も効果的です。
また用量依存性があるので倍量以上(1回2〜4包)投与を行うこともあります。服用は食前にお湯か熱いお茶などで服用し水では服用しないようにします。

子宮筋腫と漢方治療

桂枝茯苓丸には月経困難症の原因となる子宮筋腫を小さくする効果があります。
ラットでの実験で桂枝茯苓丸には子宮筋腫を大きくするエストロゲンの作用を抑える働きがあることが証明されています。
またGnRHaを用いた偽閉経療法の副作用である更年期障害様症状を緩和する作用や、併用することにより腫瘍縮小効果自体を高くするという報告もあります。
あまり大きくない子宮筋腫で挙児希望のある場合適していますが、症状の強い場合や大きな筋腫には手術療法等を考えなければいけません。

子宮内膜症と漢方治療

月経困難症の原因のひとつに子宮内膜症があります。
子宮内膜症に対する漢方療法には月経痛に対する治療。内膜症そのものの治療。手術やGnRHa療法後の維持療法。GnRHa療法に伴う副作用である更年期障害様症状に対する治療。
に分けられます。芍薬甘草湯、当帰芍薬散には内分泌作用もあるため挙児希望のある場合や子宮内膜症に合併しやすい不妊症治療中のかたに適した治療法といえます。


内膜症による月経痛、月経困難症に対する治療には先にお話した芍薬甘草湯があります。
内服方法には頓服、月経開始時もしくは開始数日前からの周期的投与法(通常量から倍量以上)があり症状に併せて調整します。鎮痛剤と異なる点は芍薬甘草湯の内服を続けていくと月経困難症自体が軽快していくことが多く、また芍薬甘草湯には内分泌作用(抗プロラクチン、抗アンドロゲン作用)もあり多嚢胞性卵巣症候群患者の排卵を誘発することが知られています。
内膜症自体の治療、もしくは手術やGnRHa療法後の維持、再発予防には桂枝茯苓丸や当帰芍薬散が用いられます。桂枝茯苓丸には子宮筋腫や腺筋症を縮小させる効果があり、当帰芍薬散は不妊症でも多用されるように排卵誘発作用があるため挙児希望のある場合に適しています。服用方法は単剤もしくは2剤、3剤を連日または周期的に内服します。
しかし子宮筋腫と同じく、大きなチョコレート嚢腫や明らかな病変がある場合などは漢方療法の適応はありません。手術やGnRHa療法と組み合わせ、また挙児希望の有無や年齢を考慮して各人にあった治療法を選択していきます。


生理痛や生理の前の不快感など女性特有のトラブルに漢方療法は最適の治療法です。
けれども漢方療法にも守備範囲があります。病変部位の明らかな器質性月経困難症や子宮内膜症には西洋医学療法や手術も含めて治療を進めていくことが大切です。

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